サロンの開催状況 第5回(5月7日)

ミニレクチャー 「地域活動に活かす 統計データの読み方・使い方」

質疑・意見交換の概要

1. 統計の基本と便利なツールについて

Q:地域の実態を知るために、まず何を見るべきでしょうか?

A: 2024年の全国の高齢者(65歳以上人口)は、約3,620万人(高齢化率約30%)に達しておりますが、統計を「1日あたり」の数字に直してみるとわかりやすい。例えば、兵庫県では現在(2024年)、「毎日約100人」のペースで人口が減少(1人当たり84人出生、186人死亡)しています。 これは1年間に換算すると約4万人の減少ですが、「毎日100人ずつ、地域から人がいなくなっている」と表現することで、問題の深刻さがよりリアルに伝わります。こうしたマクロな視点を地域の実感に落とし込むことが、統計活用の第一歩です。
 具体的なデータ収集には、政府統計の総合窓口で公的統計データベースの「e-Stat(イースタット)」を利用します。自治体職員でも認知率がやや低いことがありますが、ここには「国勢調査」などあらゆる公的データが集約されており、誰でも無料で閲覧やデータ利用(EXCEL形式でデータ入手が可能)ができます。

Q:平均値だけを見て判断しても大丈夫ですか?

A: 代表値である平均値だけを見ると「騙される」リスクがあります。例えば、極端に年収が高い人が一人混じるだけで、平均は大きく跳ね上がります(外れ値の影響)。そのため、データの真ん中の値を示す「中央値」や、最も頻繁に現れる値である「最頻値」をあわせて確認し、データの「分布」と併せて捉えることが必要です。


2. 地域づくりへの具体的な応用

Q:まちづくりに統計をどう結びつければよいですか?

A: 「いつの時点の、どんなデータか」を明確にすることです。例えば川西市の事例では、「世帯員の独立により世帯数は増えているが、少子高齢化や世帯員の市外転出などにより人口は減っている」という現象が見られました。また、ベッドタウンである川西市は、昼間「昼間人口(夜間人口+通勤・通学者の純増減)」は、減少した姿を見ることで、市内の通勤・通学による人の出入りが可視化され、地域の様々な姿が見えてきます。

Q:高齢者に統計データをわかりやすく伝えるコツは?

A: 文字や数字の羅列ではなく、「ビジュアル化」が鍵です。

⭕️グラフの活用: 経年変化は折れ線グラフ、比較は棒グラフなど使い分けます。
⭕️映像・スライドショー: 地域の風景写真に音楽を添えた動画や、AIで文字起こししたテロップを活用すると、音声情報に加え、文字情報が追加されることによりデジタルデバイド(情報格差)がある方にも伝わりやすくなります。
⭕️統計地図(GIS): 単なる数字よりも、「どのエリアが赤いか(密度が高いか)」を示し、色合いの濃淡で表現するヒートマップの方が直感的に理解されます。

3. データ分析と「公開」の考え方

Q:高度な分析スキルがなくても、データを活用できますか?

A:完璧を目指す必要はありません。私は「60点での公開」を推奨しています。 100%を目指して抱え込むより、60%の出来でも途中で公開し、周囲から「もっとこうしたら?」とフィードバックをもらう方が、結果として質が高まり、効率も上がります。分析に迷ったら、過去の類似事例を検索し、自由な意見交換などで仮説を立て、まずは関係者でディスカッションすることから始めましょう。

完璧を目指す必要はありません。私は「60点での公開」を推奨しています。 100%を目指して抱え込むより、60%の出来でも途中で公開し、周囲から「もっとこうしたら?」とフィードバックをもらう方が、結果として質が高まり、効率も上がります。分析に迷ったら、過去の類似事例を検索し、仮説を立ててディスカッションすることから始めましょう。

Q:データの信頼性はどこで判断すればよいでしょうか?

A: サンプル数と偏りに注目してください。
⭕️サンプル数: 一般的に1,000程度あれば安定しますが、300〜400以下だと誤差が
大きくなり、データの精度が大きく変化します。
⭕️偏り: 数が多くても、回答者が特定の層に偏っていれば、全体の傾向とは言えません。ニュースの数字も「どうやって調査されたか」の収集したサンプル数や調査の方法などを確認する癖をつけることが大切です。


4. アンケート調査とデジタル活用

Q:自治会のアンケート集計が大変です。効率化の方法はありますか?

A: Googleフォームなどの活用を検討してください。スマホでQRコードを読み取ってもらう形式なら、自動で集計・グラフ化されるため、集計の手間が劇的に減ります。 「高齢者はスマホを使えないのでは?」と思われがちですが、最近は、現役を引退した団塊の世代の70代後半でも多くの方がスマホを持っています。たとえば、会館などに集まってもらい、その場で教えながら入力してもらう「伴走型」の調査なら、確実なデータ収集とデジタル学習を両立できます。

Q:良いアンケートを設計するコツは?

A: 以下の3点を意識してください。

⭕️要約力を鍛える: 私は学生に「学んだことを5行でまとめなさい」と指導しています。講義の中からキーワードを3つ選び、短くまとめる訓練をすることで、伝える側のスキルの向上や受け取る側の意見も集めることができます。

⭕️設問を絞る: 最大でも15問程度。多すぎると回答が雑になり、収集したデータ精度が落ちます。

⭕️自由記述を大切に: 選択肢だけでなく、本音を引き出す記述欄を設けます。


5. 表現の極意:統計グラフコンクールの審査基準

Q:コンクールなどで高く評価される「伝わるグラフ」のポイントは何ですか?

A: 重要なのは「仮説、結論、多角的な視点、そしてオリジナリティ」の4点です。
⭕️仮説と結論の明快さ: 何を明らかにしたいのか(仮説)と、その結果どうだったのか(結論)が客観的なデータでロジカルに繋がっていることが審査の基本です。
⭕️複数のグラフによる多角化: 一つのグラフだけで全てを説明しようとせず、複数のグラフを組み合わせて多角的な根拠を示します。プラスの視点とマイナスの視点の両方の情報から考えることも大切です。
⭕️ 「足」で稼いだ一次データ: 公的統計を加工するだけでなく、自分で調査したデータは非常に高く評価されます。例えば「本当にサイコロの目は1/6で出るのか?」を1,000回投げて検証したり、特定の場所を通る車の種類を数えたりといった地道な努力は、データの収集過程を自分の目で体験でき、既存のデータにはない説得力を生みます。


6. 最後に:統計は「未来を予測する幅」

Q:将来予測のデータはどう読み解けばいいですか?

A: 統計による予測には必ず「幅」があります。「最悪のケース」と「政策がうまくいったケース」の両方を見ておく必要があります。 例えば防災データで極端に大きな被害想定が出ている場合、それは「可能性は低いがゼロではない最大限の注意」を促しているものです。数字の背後にある前提条件やデータの収集・作成方法を理解し、情報を否定せず、複数のデータから判断の材料を集め、使いこなすことが、これからの地域リーダーには求められています。

参加者コメント

・統計は世界の共通語という説明は大変納得できるものでした。

・統計はネットワークを広げるための素材、地域課題をわがことととらえてもらう手段という考え方が響きました。

・統計の全体的な流れを知ることができた。奥が深いので、今後知見を深めていきたいと思います。

・統計って使い方次第、いい加減な調査もたくさんあると思っていましたが、「統計には限界もある」「統計は共通語なのでネットワーク形成のツールにもなる」との話を聞いて考えが変わりました。前向きに使っていきたいと思います。

・統計の見せ方の工夫、統計データを見るうえでの留意点

・Googleフォームを活用した集計など、効率的な集計

・見る側にできるだけわかりやすいデータの表示

・統計とナイチンゲールとの関係など、知らなかったことを教えていただけました。

・防災に統計の活用はなされているのですか(☝将来、防災もテーマにサロンを実施したいと考えております)

・自治会のアンケートを取る前に受けたかったです。

・AIを使いこなせる人になりたいです。仕事にも、自治会にも使いたいです。

・地域活動に統計を利用できること。60%でオープンにするのでいいと思いました。

・考察ができるための仮説は、自分のやりたいことと通じていると思います。

・今後、周りの人にも統計について話をして地域に生かしていきたいです。

・最近ビッグデータをもとに何かをする企業の話などを聞きます。統計について、みんなが身近なものだとわかるように広報したらいいと思います。

 ひょうごのすがた

 兵庫の統計

 兵庫県/県政情報・統計(統計)

 eーstat(政府統計の総合窓口)

 なるほど統計学園(総務省統計局)

 寺田池協議会

(参考) データベース – 兵庫県立大学ソーシャルデーターサイエンス研究