講師:川向肇兵庫県立大学准教授 主催 : 神戸まちづくり研究所&兵庫県立大学(新長田ブランチ)
レクチャー・意見交換 「地図を使って地域を元気に」


【主な話題】
1 GISとの出会い
都市研究からGISへ/手作業で地図を作っていた時代/コンピューターとGISの発展
2 阪神・淡路大震災とGIS
被災地調査への参加/長田区での復興支援/「人の役に立つGIS」への転換
3 オープンデータ時代の到来
国土地理院とGIS/地図データの公開/誰でも使えるGISへ
4 地理院地図を使ってみる
地名検索/空中写真の閲覧/年代別写真の比較
5 神戸の戦後を地図で見る
焼け野原だった三宮/占領下の神戸/昔の街並みを探る
6 土地の成り立ちを調べる
明治の低地/谷筋と扇状地/地盤と防災の視点
7 GISの基本概念
レイヤー(重ね合わせ)とは何か/過去と現在を比較する/地図から地域を考える
8 3Dマップで地形を見る
六甲山と神戸の地形/立体表示の活用/模型作成への応用
9 オープンデータを活用する
兵庫県オープンデータ/交通事故データ取得/ExcelとGISの連携
10 地域課題を見える化する
事故多発地点の地図化/表では見えない課題/GISによる可視化
11 データで政策提案
エビデンスにもとづく提案/行政の縦割りと情報共有/GISの社会的意義
12 人の流れを読むGIS
年代別・性別の行動分析/神戸都心部の人流データ/まちづくりへの応用
13 まとめ
GISは地域づくりの道具/歴史・防災・交通・観光に活用/地図から地域の未来を考える
兵庫県立大学の川向准教授を講師に迎え、「GIS(地理情報システム)と地理院地図の活用」をテーマとした勉強会を開催しました。
川向先生は、都市構造や地域金融の研究からGISの世界に入り、阪神・淡路大震災では長田区の被災状況分析にも携わりました。現在では、地理情報や統計データを活用した地域分析を研究されています。
先生は「昔は地図データを自分で作らなければならなかったが、現在は国土地理院や国の機関が多くのデータを公開しており、誰でも活用できる時代になった」と説明されました。
GISは専門家だけの道具ではありません。地域の歴史調査、防災学習、交通事故分析、自転車盗難マップの作成など、身近な地域課題にも活用できます。
地理院地図を使ってみよう
① 地理院地図を開く
- ブラウザを起動
- 「地理院地図」で検索
- 「地理院地図 GSI Maps」を開く
② 地名を検索する
- 左上の虫眼鏡マークをクリック
- 「三宮」など地名を入力
- 候補から目的地を選択
③ 現在の航空写真を見る
- 左上の「地図」をクリック
- 「写真」を選択
これで現在の航空写真が表示されます。
④ 昔の航空写真を見る
- 「地図」→「写真」
- 「年代別写真」を選択
- 「1945~1950年」
- 「1984~1986年」
などを選ぶ
戦後直後の神戸や昭和後期の街並みを見ることができます。
⑤ 昔と今を比較する
- 「ツール」をクリック
- 「重ね合わせ・比較」を選択
- スライダーを左右に動かす
昔の写真と現在の地図や航空写真を比較できます。
⑥ 画像として保存する
- キーボードの
「Print Screen(PrtSc)」
を押す - 必要部分を選択
- Wordやペイントに貼り付ける
地域史調査や資料作成に活用できます。
活用例
・昔の村や町の姿を調べる
・戦災や震災の痕跡を探す
・自宅周辺の昔の地形を調べる
・土地の成り立ちや災害リスクを知る
・地域学習やまち歩きの教材にする
地理院地図は国土地理院が提供する無料サービスです。
「昔の写真を見る」だけでも十分楽しめます。自宅や故郷、思い出の場所をぜひ一度探してみてください。
講座後半では、地理院地図を活用して「土地の成り立ち」や「地域課題の見える化」を体験しました。
まず、地理院地図の「明治の低地」を表示すると、現在の三宮周辺でも、かつて海や湿地、田んぼだった場所が分かります。
川向先生は、
「昔の地形を知ることで、地盤の強さや浸水リスクを考える手掛かりになる」
と説明されました。
さらに「地形分類図」を重ねることで、谷筋や扇状地など自然地形も確認できます。住宅購入や地域防災の参考にもなりそうです。
また、GISの基本概念である「レイヤー(情報の重ね合わせ)」についても紹介がありました。
現在の地図、昔の航空写真、土地利用、地形分類など、異なる情報を重ねることで地域の変化や特徴が見えてきます。
後半では3Dマップも体験しました。神戸の地形を立体表示すると、六甲山地から海へ向かう急な地形が一目で分かります。作成した3Dデータは、模型として出力することも可能とのことでした。
さらに、兵庫県が公開しているオープンデータを使い、交通事故データを地図上に表示する実演も行われました。
表だけでは分かりにくい事故情報も、地図上に表示すると事故が集中する道路や交差点が一目で分かります。
川向先生は、
「政策提言には感覚だけでなくデータが必要」
と述べられました。
事故マップや人口分布、人の移動データなどを活用することで、
・交通安全対策
・見守りカメラ設置
・道路改善
・地域課題の提案
などに説得力を持たせることができます。
GISは単なる地図ソフトではなく、
「地域の情報をつなぎ、課題を発見し、共有するための道具」
であることを実感する講座となりました。
実習メモ
1 土地の成り立ちを調べる
- 地理院地図を開く
- 「土地の成り立ち」を選択
- 「明治の低地」を表示
分かること
・昔の海岸線
・湿地や田んぼだった場所
・埋立地
・旧河川
2 自然地形を調べる
- 「土地の成り立ち」
- 「地形分類(ベクトルタイル)」を選択
分かること
・扇状地
・谷筋
・低地
・段丘
3 3Dマップを表示する
- 「ツール」
- 「3D」
- 「開始」
できること
・地形を立体表示
・高さ倍率変更
・地形模型作成用データ出
4 兵庫県オープンデータを利用する
- 「兵庫県オープンデータ」で検索
- データカタログを開く
- 「交通事故」で検索
- データをダウンロード
5 事故データを地図に表示する
- Excelで必要なデータを抽出
- CSV形式で保存
- 地理院地図の「ファイル読込」
- CSVを読み込む
すると、
・事故多発地点
・危険な道路
・事故集中エリア
を地図上で確認できます。
GISは専門家だけの道具ではありません。
地域史の調査、防災、交通安全、まち歩き、地域提案など、さまざまな分野で活用できる身近なツールです。
参加者コメント
・気づき:オープンデータの、GISへの利活用。
・手順書(レジュメ)いただけると嬉しいです。
・座標情報さえあれば、一目でわかる地図にできることがわかりました。現在持っている写真から発想できることがある。
・防災を考えると、ひろいろな広がりがあると思いました。
・国土交通省は何のために3Dマップを公開しているのですか。心配なことはないですか。
→国交省の考え方は 次のリンクに書かれています https://www.mlit.go.jp/plateau/about/
・個人のデータをとられっぱなしではなく、使わないともったいないと、初めておもいました。
・パソコンにワードやエクセルが入っておらず、データを取り込む作業ができなかったのが残念でした。
・次回の希望:カメラ(又はスマホ)に位置情報をつけて、地図に取り込む作業をやってみたいです。
・GISの使い方、ArcGISとの違いをもっと知りたい。
・できれば川向先生に連続講座をお願いしたいです。
・次回、狭い地域の安全情報を一般の方に公開する方法を教えていただきたい。
・たいへん興味深く聞かせていただきました。今後地域で生かせる点がないか、考えてみたいと思いました。
・おもしろかったです。ありがとうございました。
・地勢学の話をもっと聞きたい。
講師から紹介のあったサイト
(リンク)
<川向准教授・同ゼミ関係>
酒米の移植日マップ(当日ご紹介があったもの)
令和7年度 県立大附属高校で行った加古川市内の交通事故を例にした模擬講義のコンテンツ.
兵庫県立大学川向研究室紹介サイト(当日ポスター等でご紹介のあった資料あり)


